青山学院大学社会情報学部ワークショップデザイン 2017

本授業ではグループでアート系ワークショップの体験(芸術表現体験活動)とそれを振り返る活動(省察活動)を行います。これらを円環的に繰り返していくことを通して、最終的には多面的な自己に気づいていくことを授業の到達目標としています。他者と様々な体験を共有することで気づきが生まれ、自分の「ならでは」を見つけることができるのです。
ここでは苅宿教授の講義をはじめ、授業中の学生の様子やリアルな感想などをできるだけ詳しくご紹介していきます!

vol.1【導入】ワークショップデザイン/メディアコミュニケーション4月20日

2017度の学部授業がスタートしました!今回も授業の様子や内容をブログで紹介していきます。

本授業ではアート系ワークショップの体験(芸術表現体験活動)とそれを振り返る活動(省察活動)、自らの学びの履歴を可視化するポートフォリ作りなどを180分で行っていきます。これらを円環的に繰り返していくことを通して、最終的には多面的な自己に気づいていくことを授業の到達目標としています。

今年度は定員の3倍近い学生が履修希望を出してくれました!定員を増やし、抽選に通った40名の学生とともに学びを進めていくことになりました。今回の授業テーマは「レディネス」の構築です。レディネスは心理学用語で、学習の成立にとって必要な「前提となる知識や経験など」、「心身の準備性」を意味します。(出典:リクルートマネジメントソリューションズ用語集.)つまり、準備の段階です。何の準備かというと、心の準備や環境の準備です。

本授業では講義を座って学ぶ時間はほんの少しで、他者と関わりながら自分を表現することを通して学ぶことがメインとなります。意味や目的を見失うと、活動中にどうしたらいいのかわからなくなってしまうため、準備の時間を設けて授業に出てくる要素の意味や活動の目的について理解してもらいました。▼

本授業における「活動」というのは主にワークショップを指しています。ここでいう「ワークショップ」とは「コミュニティ形成のための他者理解と合意形成のエクササイズ」です。さらに、本授業では「アート」を1つの切り口としているのでワークショップも演劇、ダンス、メディアなどアート系のものを体験してもらいます。

これから授業が進むにつれて自分を表現していくことが非常に多くなります。そこでまずは表現をすることの第一段階として、ポートレート撮影を行いました。最近教室に新しく設置された撮影スタジオで1人ずつポートレートを撮っていきました。緊張、真剣、笑顔、自然体など、さまざまな表情がありましたよ。7月ごろにはこの表情はどんな時の自分なのかを人に伝えられるようになっているかも!?▼

本授業では知識を覚えるよりも意味を深めていくことを大切にします。この活動はどういう背景、理論からきているのかという知識ももちろん大切ですが、他者と非日常の体験(身体と即興の学び)をすることを通して自明性(自分の当たり前)に気づくことを目指しています。その気づきをたくさん体験してもらい、自分と人が違うこと、自分の「ならでは」がわかることに面白さを見出してもらえればと思います!

自分って、○○な人だ!と思いこんでいるところをもう少し広げてみませんか?

毎年、この授業の終わりには「こんなにも自分のことを考えた経験は初めてでした。」「自分のことを考える経験が大学生活のうちにできてよかったです。」「正直自分のことを振り返ったりするのはきつかったけど、最後にはなんか納得できた」などの感想をもらっています。

授業評価は加点法、相互評価、自己評価とします。相互評価や自己評価をするときに使うのは昨年同様ポートフォリオです。半期の間、授業ごとに学んだことや気づいたことなど自分の学習履歴をA3サイズのスケッチブックに可視化していきます。ここまでで授業の説明は終了です。ここから先は実際に活動を体験してみましょう!!

最初に今回の授業テーマは「レディネス」の構築であると書きました。そこで、ここからはお馴染みの「HACOBO」と「えんたくん」を使ってとにかくたくさんの人と出会い、考えを人と共有することや学習コミュニティを形成していくことに慣れてもらいました。▼

その様子を観察している苅宿ゼミの学生たちも観察することに慣れる、私たち運営スタッフも学生に慣れることで、受講生と運営スタッフ総勢60名ほどのワークショップデザイン/メディアコミュニケーションという学習環境が形成されていきます。これからがとても楽しみですね!!

ちなみに「HACOBO」は高さによって窓の外の景色が見えなくなるとともにグループメンバーの目の高さが揃います。この2つの条件によって、親密圏が近しくなります。また、「えんたくん」を置くことでこの親密圏を固定することができます。こうして道具を組み合わせることで、学習コミュニティの形成を促していきます。▼

ここ3年くらい授業で「えんたくん」を使用していますが、今回が最もリアクションが良かったですね!この道具を使って、何度もグループをシャッフルすることで40人の名前を覚えていく、自分の考えを伝えるゲームをしました。

今度は「パズルマット」を敷いてお花見のような形で「好きな映画」「好きな本」の話をしていきます!▼

次に、最初のグループに戻ってどんな人に会ったのかお互い報告し合います。もしかすると、共通の人に出会っているかもしれませんよね!

▼身を乗り出して最初のグループメンバーに報告をする彼はこの授業のムードメーカー!!

ヒューマンネットワークは大学だと、サークルやクラスなど共通点がある人同士が自然と繋がりやすい環境が整えられています。しかし社会だと、自分からコミュニティに入ろうとすることや、他の人が入りやすいコミュニティ環境を作らなければならない場面が多く訪れるでしょう。たとえ新しいコミュニティに入りにくいと思っている人も、環境や状況がきっかけで入りやすい状況が生まれることがあるのです。また、きっかけとなる環境や状況を探すだけではなく、自分で作ることができるのです!そのことに気づいてもらうこと、そして気づいた後の練習の場として本授業を捉えてもらっていいと思います!本授業を生かせる場面は日常の中にたくさんあると思うので、そういうのを見つけていくのも授業を楽しむ1つの方法であり、このブログを読むときの楽しみ方でもあると思います!

今回最後の活動として、KJ法を行いました!「コミュニティ形成をするときに何が必要か」というテーマをKJ法でまとめ、プレゼン動画を提出してもらいました。また、グループ内の他己紹介動画も撮影して提出してもらいました。▼

【~おまけ~リフレクションシート紹介】
ここでは学生が授業後に記入してくれたリフレクションシートをいくつか紹介していきます。

▼本授業の学習環境の仕掛けに気付いてくれていました!

▼コミュニティ形成の条件は今後の授業を通してさらに精緻化したり、新しく発見したりできると思います!

社会情報学部附置社会情報学研究センター
研究スタッフ 岡本夏海

vol.2【導入】ワークショップデザイン/メディアコミュニケーション4月27日

4月27日(木)第2回目の授業が行われました!
今回もレディネスを構築する時間です。今日は社会のさまざまな人や現象を切り口として、この授業の目的である多面的な自己に気づいていくことがなぜ必要であるのかをお伝えしていきます!

前提として、なぜ「多面的な自己」なのかについて、小説家である平野啓一郎氏の「分人」という考え方を切り口として紹介します。「人間にはいくつもの顔がある。相手次第で自然とさまざまな自分になる。それは少しも後ろめたいことではない。」(『私とは何か「個人」から「分人」へ』 講談社現代新書より)
例えば、ゴッホは自分の自画像を書き続け、常に自分とは何かを問い続けました。この授業でも、アート系のワークショップ体験の中で出て来た無意識の自分を省察の時間で振り返って意識化するという活動を何度も繰り返します。そこでは良い自分も嫌な自分も見えてくるでしょう。しかし、嫌な自分を消すのではなく、それを知りながら一方で良い自分を探すという考え方を持って授業に取り組んでもらいたいと思っています!

では、どのような方法で多面的自己に迫っていくかというと、「共有と表明」の考え方を使うのです。この考え方はまだピンとこないかもしれませんが、約3ヶ月の授業期間で芸術表現体験活動と省察活動を繰り返すことを通して少しずつわかっていってもらえればと思っています。
そこで今日は、なぜ「共有と表明」という方法で多面的自己に迫っていくのかという理解を促進するためにいくつかの要素を紹介していきます。今は1つ1つの要素がバラバラに見えるかもしれません。しかし、最終的には「ああ〜そういうことだったのか」という感覚が生まれるよう、本授業はデザインされています。その種明かしはブログの中で少しずつ紹介していきますね。

【要素1】シェアリングエコノミーという考え方

「シェアリング・エコノミー」とは、典型的には個人が保有する遊休資産(スキルのような無形のものも含む)の貸出しを仲介するサービスであり、貸主は遊休資産の活用による収入、借主は所有することなく利用ができるというメリットがある。貸し借りが成立するためには信頼関係の担保が必要であるが、そのためにソーシャルメディアの特性である情報交換に基づく緩やかなコミュニティの機能を活用することができる。(総務省HPより)
つまり、このことを本授業に置き換えて考えると、ワークショップの体験、意見や感想を持つこと、作品生成などこれから授業内で経験することを他者と共有していく、シェアリングのマインドを持つ「学習コミュニティ」を作っていくということです。自分が出力したものを他者と共有する感覚を癖にし、その作業を通して多面的自己の形成を促進していきます。
▼具体的には授業内で、前回グループで共有したことを写真や成果物を使って全体でも再度共有します。

【要素2】働き方の多様性

今、多様な働き方をする人が増えています。社会のほんの一部ではありますが、徐々に男女の境が解消され女性の管理職や技術者も増えています。また、全く異なる2つ以上の仕事を持つ人もいます。副職を認める企業が増え、社会人が本業以外の肩書きを持つことも珍しくなくなってきました。例えば、組織の枠を越えて新しい社会を創る活動を実践するスタイルを社会に広げていこうと考える「2枚目の名刺」というNPO団体が注目されています。さらに、ビジネスパーソンが専門性を使ってボランティアをしていくプロフェッショナルボランティアにも注目が集まっています。
多様な働き方のメリットの1つは、本職以外にも所属するコミュニティややりがいを持っているということです。今、非正規雇用の率は4割近くとなっています。正規雇用で働きたいけど働けず非正規雇用として働いている人も多いです。そこで先にも述べたように、様々な働き方と自分や社会の様々な条件を合わせて考えていく必要があります。

【要素3】態度表明社会感覚

受講生には、自分が何か意見表明することに慣れるための練習の場として本授業を捉えてもらっています。まず、意見表明の例としてヒラリー・クリントンの敗北宣言の映像を見ました。アメリカは男性優位であり、保守的な国と言われています。そんな中、彼女はマイノリティでも大統領になれる国だと証明しようと戦っていました。抜けそうで抜けない男性優位の社会のことを「ガラスの天井」と表現し、敗北宣言ではその「ガラスの天井」を破ることができなかったと語っています。自分の態度や意見を表明することには意味とパワーがあることを感じてもらいたいと思い、彼女の例を取り上げました。

ここまでさまざまな要素をご紹介してきました。社会に溢れるたくさんの要素を知っているだけで選択肢が広がったり、新しい考え方を生み出すことができます。特に、本授業を開講している社会情報学部は学際的な学部であり、心理学から統計や数学、経済など幅広く学びます。4年間で様々な経験をするけれども、それらを活かしたり繋げたりすることが何かわからずに就活や卒業を迎えてしまっている人が多いように感じます。
それではもったいない!
そこで、先ほどのご紹介した要素を受講生のみなさんにも実践してもらいます。まずは自分の意見を表明し共有することをやっていきたいと思います。その環境の1つとして「ホームグループ」というものを作りました。「ホームグループ」は等質性の高いと判断した4人を組み合わせたグループです。受講生のみなさんにはこの先の授業の中で様々なグループ編成を体験してもらいますが、その中でも核となるのがこの「ホームグループ」です。授業デザインの観点でも非常に重要な役割を果たしています。詳しくはブログの中で少しずつ紹介していきますね。

では早速、ここまでの授業の説明や意図について感じたことや考えたことを「ホームグループ」でKJ法を使って共有しみました!

このように、自分の意見を話す→グループでまとめる→まとめたものを伝えるという「共有と表明」のサイクルを何度も繰り返します。他のグループの人へのプレゼンが終わった後に質問をし合うグループがあったり、話し方についてコメントを言い合ったりするチームもありました!

ここからは「ホームグループ」に戻り、先週のリフレクションシートをグループメンバーと共有します。ポイントは話しの聞き方!その人の言いたいことをうまく引き出すように聞いてあげることを意識します。こうした意識的なトレーニングを繰り返すことで、自他ともに「共有と表明」ができる環境を普段からも作れる人になれるといいですよね!

最後に、「共有と表明」をテーマにしたビタハピを行いました!受講生のみなさん必ず1年生のオリエンテーションの際に経験しているビタハピ。その時はできるだけ多くの人と出会うことが目的でした。しかし、2度目の体験となる今回の目的は「共有と表明」です。自分の考えをとにかく他者に表明し、共有します!
▼苅宿ゼミのエース濱谷くんが司会を務めました!

お題は次の3つでした。
お題1:好きな食べ物と名前をエピソードも踏まえて紹介してください。 
お題2:世の中で起こっていることで気になっていることを話してください。
お題3:自己紹介するとしたら何を紹介することが自己紹介になると思いますか?

【~おまけ~リフレクションシート紹介】
▼意識して気にすると、興味が広がりますよね。人間ってもっともっとおもしろい部分がたくさんあると思うし、おもしろがれることももっとたくさんあると思います!

▼ゴールイメージが持てるかどうかでこの後の授業の受け方も変わってくると思います!みなさん、自分なりのゴールイメージは湧きましたか??

▼これから、良いチームとはどんな要素があるチームなのか、一方で悪いチームとは何かを考えてみるのもおもしろそうですね!

社会情報学部附置社会情報学研究センター
研究スタッフ 岡本夏海

vol.3【田上豊氏】ワークショップデザイン/メディアコミュニケーション5月11日

本授業ではアート系ワークショップの体験(芸術表現体験活動)とそれを振り返る活動(省察活動)、自らの学びの履歴を可視化するポートフォリオ作りなどを180分で行っていきます。これらを円環的に繰り返していくことを通して、最終的には多面的な自己に気づいていくことを授業の到達目標としています。

第3回目の授業が行われました!
今日はアート系ワークショップの(芸術表現体験活動)体験回です!
本日のゲストは「田上パル」主宰(http://tanouepal.com)、劇作家・演出家の田上豊さんです。田上さんは教育現場を中心に、創作型、体験型のワークショップを全国各地で実施されています。今回は田上さんをお招きして芸術表現体験活動としての演劇ワークショップを実施しました。ではさっそく、活動の様子をご紹介します。

▼どんな活動をするのかわからず、緊張と不安でまだ固い表情の学生が多いですね。

最初にアイスブレイクとして、鬼ごっこと椅子とりゲームを組み合わせたもの、タッチされた人がゾンビになっていくゾンビ鬼をしました。椅子取りゲームの作戦会議では全体に向けてアイデアを発信する学生が多く、40人の学習コミュニティが少しづつ出来上がっていく過程を垣間見ることができました!
▼椅子取りゲーム鬼ごっこ 最大で50秒近く鬼が椅子に座るのを阻止できていました!

次にメインワークとして、田上さんから学生に穴あきの台本が配られました。見本として、苅宿ゼミの3人が最初に「電車の中」、次に「家の中」という設定で田上さんが穴埋めをした台本を演じました。セリフはほとんど変わっていないのに、場所の設定が変わるだけでガラリと変わりますね。

ここからはグループワークで、先週組んだ4人で穴あき台本の穴に入れるセリフを話し合いました。このときに学生に課されたmissionは「他のチームが思いつかないような思いっきりふざけたセリフを入れる」ということです。さて、どんなセリフを考えているのでしょうか〜!

セリフの穴埋めが終わったところで、早速演じてみます!しかし!自分たちの考えた台本を演じるのではありません。台本をシャッフルして、他のチームが作った台本を演じます。一度回収された台本の中からランダムに選ばれた台本が学生たちに渡されていきます。

今回は役者が3人、1人が演出家として3人をモニタリングする役を担っていました。何度か練習を重ね、出来上がった演劇を1チームずつ発表していきました!練習していた場所で発表も行うため、観客が動くという発表形式です。

道具面でいうと、卓球台や網、HACOBO、鏡、ドア、脚立などを何か違うものに見立てて使っていました。例えば、卓球の球をキャッチする用の網を試着室や覗きようの壁に見立てていたグループ、HACOBOを机や手術台に見立てていたグループ、脚立をジェットコースターに見立てていたグループがありました!キャラクター面でいうと、突然流行りの芸人のネタが出てきたり、歌を歌ったり、男子が女子の役を演じたり、声のトーンを変えてみたり、他にも様々な工夫がされていて、とても盛り上がりました!これまでの授業の中では見ることができなかった学生の意外な一面が見えたので、今後の活動でもどんな表情をみせてくれるのかとても楽しみです。

最後に田上さんから全てのグループに向けて一言ずつコメントをいただきました!

〜休憩〜
ここからは、さきほど体験した田上豊氏のワークショップ体験の振り返りをしていきます!
まずは忘れないうちに先ほどのワークの感想をグループメンバーと共有していきます。次に、自分たちが書いた台本を演じたグループと感想を共有。飲み物を片手にティーパーティ形式で行いました。ここでは学生が180分の授業に飽きない工夫、モチベーションを保つ工夫を取り入れています。
▼お互いに面白かったポイントを伝え合うシーンが多く見られました。

ここからは前回と今回を踏まえて、振り返りをしていきます。まずは前回について書いてくれた学生のリフレクションシートを全体で共有しました。

本授業では有名な、苅宿教授お気に入りのスタルクの椅子。これは最初は椅子だとはわからないのですが、デザーナーであるスタルクが考え尽くした椅子としての機能があります。先ほど飲み物を飲みながら話をしてもらいましたが、そこにも苅宿俊文という学習環境デザイナーが考えた意図があります。
デザイナーが考えたこととそれを使う人の捉え方は違うこともあります。でも、そこがとても面白いんですね!思いがけないことが生まれる瞬間をこれまでにもたくさん目にしてきました!このことはポートフォリオ作成でも同様に考えることができます。こちらが与えているのはスケッチブックとペンやポストイットなどの最低限の道具です。それらをどう捉え、使うかは、学生のみなさんに委ねられてるということです。

授業最後はポートフォリオ作成を行いました。これまで、学生にはたくさんの資料を配布してきました。それらの資料を整理しながら、頭の中も整理し、スケッチブックにポートフォリオとしてアウトプットしていきます。

〜おまけ〜「何でも自由でいいのか」問題!!
本授業は何か決めることをできるだけ学生の意思に任せていますが、その時に1つだけ条件があります。それは学生が決めたことに対して「その人なりの理由があること」です。理由の質はともかくとして、どうしてそうするのかと問いかけたときにその人なりの理由がある場合にはその人の意見ややり方を受容するようにしています。

社会情報学部附置社会情報学研究センター
研究スタッフ 岡本夏海

vol.4【増田敦氏】ワークショップデザイン/メディアコミュニケーション5月18日

本授業ではアート系ワークショップの体験(芸術表現体験活動)とそれを振り返る活動(省察活動)、自らの学びの履歴を可視化するポートフォリ作りなどを180分で行っていきます。これらを円環的に繰り返していくことを通して、最終的には多面的な自己に気づいていくことを授業の到達目標としています。
第4回目の授業が行われました!今日もアート系ワークショップの(芸術表現体験活動)体験回です!本日のゲストは演出家の増田敦さんです。増田さんは劇団俳協(http://haikyo.co.jp/theatrical/)に所属し演出家としてご活躍されています。また、ワークショップデザイナー育成プログラム(http://wsd.irc.aoyama.ac.jp)の13期生です。大人や大学生向けだけでなく、小中高生向けにもコミュニケーション教育としてのワークショップや劇団員の方に向けたワークショップもされています。

ではさっそく、活動の様子をご紹介します。まずはジャンケンゲーム!!ただのジャンケンではありません。負けた人が勝ちというルールの負けジャンケンと、2人でジャンケンをして足して7になったらポイントが加算されるセブンジャンケン、3人でジャンケンをして足して11になったらポイントが加算されるイレブンジャンケンです。

次にステータスゲームです。ステータス(地位)の上下関係を態度で表現していきながら、自分のステータス(地位)を見つけていくゲームです。ステータス(地位)は1~40の数字が書かれたカードで決められています。カードの数字はその人の地位を表していて、数字が小さいほど、偉い人、強い人です!ただし、自分に配られたカードの数字を見てはいけないので、自分がどのくらいのステータスかはわかりません。この自分のステータスがわからないところがステータスゲームの面白さですね。できるだけたくさんの人とコミュニケーションをとることがポイントです!

▼ゲーム開始直後に「40」のカードを持っている彼の周りの人が一斉にひざまづいて挨拶をする場面。もっとも大きい数字、小さい数字のカードを持つ人はわかりやすいのですが、中間の数字のカードを持つ人は自分の数字を察するのがとても難しいんですよね。

▼ゲームの最後に自分のカードの数字が何かを想像して地位が低い順(数字の数が小さい順)に時計回りに円になって座ります。そして、自分は何者なのかと、数字の予想が合っていたのかを確認します。身分の低い方から、「ミジンコ」「消しかす」「シャー芯」「帰ったほうがいい」「シャーペン」「灰」「ハエ」「乞食」「ゴミ」「もっとゴミ」「蚊」「めだか」「エビ」「粉々」「筆箱」「社会不適合者」「グリーンスムージー」「アリ」「パンピー(一般人)」「平民」「カニ」「農民」「農民」「大豆」「貴族」「ちょっと上の貴族」「もうちょい上の貴族」「土地を持っている貴族」「王族」「大統領」「王の弟」「ブランド品をたくさん持っている」「めっちゃ貿易に強い」「天皇陛下の娘」「石油王」「社長」「嬢王様」「地球」「神」「太っている」など、その人の身分や特徴が挙がっていました!

続いて、メインワークの社長ゲーム!!ここでは、グループであるシーンを演じます。1人が社長役がイスに偉そうに座ります。周りに立っている3人はその会社の社員だったり、そのグループの中では部下に当たる人たちです。
この4人で下記の下線部のセリフを自由に考えるワークです。
例えば、焼き肉チェーン店の社長と社員という設定。
社員A:(慌てた感じで)社長、大変です!
社長:(大きな声で)どうしたーー!?
社員A:(すごく困って)社屋が火事で燃えています!
社長:(大きな声で!)それはちょうどいい!
社員全員:(すごく大げさに驚いて)ええっーーーーー?!!といってざわつく。
社長:(自信を持ってはっきりと)ちょうどいいから、みんなでバーベキュー大会をしよう!
社員全員:(大きな声で)さすが社長!!!!(拍手パチパチパチパチパチーーーーー)

では早速やってみます!このゲームの面白さは社員が持ってくる大変ネガティブな事件を、強引な理屈でポジティブな話にすり替えてしまう落差を楽しむところです。

その後、効果音アプリや小道具も使って自分たちがやってみた社長ゲームのネタを台本化していきます。問題が3連発やってきます、その時社長はどうするのか・・・!!??各グループで台本作成と練習を行いました。

そして、完成した作品の全体発表会を行いました!!
▼▼ユニクロvsGU問題、異物混入問題、女湯が男湯になってる問題
最後の問題ではなぜか全員オネエに!4人とも恥ずかしがることなく演じていましたね。演技をしている最中とそうでないときの切り替えがはっきりしていた点も特徴的でした!

■■ラグビー選手の問題をレフリーが解決していくという設定!
ラグビー部の男の子が怪我をしてしまっているのを逆に強みにしていました。問題を持ち込む選手が3人→2人→1人に減っていくという設定が特徴的でしたね!

■■ちょっと天然な社長・ママが問題を解決していくという設定!
ちょっとした間や声の高さ、効果音が鳴り止まない事件なども重なって、キャラが完全に確立されていましたね!

■■トゥーンタウンの門が壊される問題、暗殺計画問題、娘の慶應の不正入試が発覚した問題
女子チームなのですが、男前な社長がさっぱりと問題を解決していくんですね。社長の解決案にノリノリで納得する社員たちが印象的でした!

▼▼おまわりさんに囲まれている問題、発砲事件
組長の答えがどこか不安なんですよね、、、大丈夫ではなさそうな状況でシュールな解決案を出す組長に、本気のトーンで「ええっ?」とリアクションする団員が印象的でした。

▼▼ちょんまげがなくなっていた問題、試合に勝てない問題、土俵が燃えている問題
女性が親方をやるという斬新なアイデア!的確すぎるアイデアで問題を解決していました。親方の懐の広さが伝わる演技でしたね。また、効果音の使い方を工夫していました!

▼▼自分がわからなくなってしまった問題、巨人に囲まれた問題、入れ替わった問題
誰もがわかるネタや旬のネタを取り入れてリズミカルに3つの問題を解決していっていました!最後、「社長大変です、、、」という社員の切実な声が聞こえて来ていました。

▼▼奥さん不倫問題、隣の組みが攻めてきている問題、恐竜がいる問題
お頭がとっても落ち着いて問題を解決していましたね。去り際の団員のつぶやきによって、場面がとてもリアルになっていました!

■■奥さんが秘書と浮気してる問題、会議遅刻問題、ズボンのチャックが開いている問題
結構リアルな問題が繰り広げられていましたね。社長の声のトーンと社員の声のトーンが大きく異なっていたので、社員が困っているという点がとても伝わってきました!

〜休憩〜

ここからは省察活動です!
今日は省察とは何か改めて考えてみます。ここでいう省察とは芸術表現体験活動を振り返ることです。そして、多面的な自己の発見さらには定着を目指しています。「メタ認知」とは、次の3段階のモニタリングで構成されています。

1.芸術表現体験活動最中の自己モニタリング
2.芸術表現体験活動最中の自己モニタリングのモニタリング(=省察活動)
3.省察活動を経て印象に残ったことを抽象化・意味付けするモニタリング
この3段階のモニタリングができるようになると、本授業の意味がわかるようになったり、自分のことがわかったりするということです。

次に、今日の芸術表現体験活動中のラッシュを見ました!ラッシュも省察を促す重要な要素です。省察を通して多面的自己に気づくためには自分を認めていくことがポイントになります。芸術表現体験活動の中で表現をすることには正解はなく、自分が納得したり、おもしろがったりできればそれでOKです。したがって、こうしなければいけない!という考えを思い切って捨てることができますよね。「こういう自分もOK!」「こういう人おもしろい!」というように、自分の感覚や他の人のリアクションを素直に受け取って楽しむことができると思います。

しかし、そういったことが苦手な人ももちろんいます。苦手な人はなおさらメタ認知を育てるチャンスかもしれません!本授業ではポジティブなこともネガティブなことも、自分がそう感じたのはなぜなのかを考える素材になるからです。ネガポジ感情も含め、持っている素材を全て使ってメタ認知を育てる省察活動を繰り返すと自分のことがわかってくる、自分のことがわかってくるとちょっとずつ自分に納得することができるのではないでしょうか。自分に納得できると、次も楽しみになりますよね。その楽しみな気持ちはやる気を生み出します。このように、過去と未来を省察でコントロールしながらメタ認知を育てていきたいと思っています。

ここで、ひとつ大事なこと。省察は決して反省(ダメなところを直そうという考え方)ではありません!次をよりよくするには何を繰り返し、何が新しく必要なのかを考えることです。

ここからは省察活動を実際にやってみます。まずはワーク中の面白さや難しさなどをKJ法で共有!

次に、これまでの2回の芸術表現体験活動を踏まえて、自分たちのグループの得意を見つけ、グループを紹介するキャッチコピーを作ってもらいます。

他にも・・・「power play」「秘めたるポテンシャル」「冒険とイマジネーションのグループ」「1^4 = 1」「筋肉質なハードル設置係」「2番手でいいんです」「ハイスピードスロースターター」「四人五脚」というキャッチコピーがありました!

そして残りの時間はポートフォリオ作成です!
前回、前々回のポートフォリオを作成していきます。シールやポストイット、カラーペンを自由に使って見開き1ページに自分の経験を表現していきます。

【~おまけ~リフレクションシート紹介】
▼今回のワーク「地位当てゲーム」を経験して、以前講義の中で出てきた「分人」の話を思い出したんですね!

▼夢中な自分と、一歩外に出て客観的にその場をみている自分。その感覚が実は省察活動でとっても役に立つんです!

▼こういうどっちでもない感覚って普段の生活の中でも結構あって、難しいですよね。それぞれ、どんな場面では使えて、どんな場面では使えないのか考えて見るとおもしろいかもしれませんね!

▼本当に、そう思います!!おもしろがれる学習コミュニティを作っていきましょう!

▼今とは違うグループで活動をしたらまた違う自分が出きたり、グループメンバーの、本人も知らない自分を引き出してあげられたりするかもしれないですね!

次回は省察回です。田上氏と増田氏の芸術表現体験活動を様々なワークをしながら振り返ります。

社会情報学部附置社会情報学研究センター
研究スタッフ 岡本夏海

vol.5【省察回①】ワークショップデザイン/メディアコミュニケーション5月25日

本授業ではアート系ワークショップの体験(芸術表現体験活動)とそれを振り返る活動(省察活動)、自らの学びの履歴を可視化するポートフォリオ作りなどを180分で行っていきます。これらを円環的に繰り返していくことを通して、最終的には多面的な自己(自分の様々な特質)に気づいていくことを授業の到達目標としています。

第5回目の授業が行われました!
今日は180分の省察回です。改めて、ここでいう省察とは芸術表現体験活動を振り返って自分を俯瞰、分析してみることをいいます。そして、多面的な自己の発見さらには定着を目指しています。様々な前提条件を持つ人々が共生する社会が当たり前となった今、学生たちがこれから学校教育を離れ社会に出たときに苦戦するであろうことは自分を他者に伝えるということです。そのとき、自分をよく知っている必要がありますが実際は自分のことをよく知らない人が多いんですよね。そこで、本授業ではグループワークで(=他者を通して)自分のことを考えていきます。

ブログ前半は授業中の活動紹介から!
後半は「省察とは何か」という問いについて学問的な話を踏まえてご紹介します!
まず、苅宿研究室のゼミ生による各グループ俯瞰映像のプレゼンから。これまでの受講生の様子を研究室のゼミ生が撮影をしていました。彼らがこれまでの映像を編集して「受講生をどのような視点で見ていたのか」をテーマに各グループへプレゼンをします。これは受講生にとっては、他者の視点を通して自分を知っていくという振り返り活動です。

次に、ホームグループのキャッチコピーを作り、他グループに紹介してもらいます!
と、その前にホームグループ内で何を紹介するか相談します。ホームグループで相談するお題は2つ。
「1. グループで作ったキャッチコピーの説明」
「2. このグループだからできそうなこと」

また、実際にホームグループのキャッチコピーを他グループに紹介する前に、話すことと聞くことの意識化をします。今年度初登場!ミーティングレコーダーを使います!
▼ミーティングレコーダーは4つ角にカメラが付いているもので、4人で円になって話をしている映像を撮影することができます。(株式会社キングジムHPより)

まずはミーティングレコーダーを使ってみようということで、「授業の中で印象に残っていること」を話している間の映像を3分間撮影してみます。3分間の話が終了したら今撮った映像をパソコンで見返します。

▼ミーティングレコーダーを使うとこのような映像を撮ることができ、自分が他者と話をしている様子を客観的に見返すことができます!

さて、「初めてミーティングレコーダーを使ってみた感想、振り返り」をテーマにもう一度話をしてもらいました!3分間、テーマについての話が終了したら今撮った映像を見返します。

自分の話す姿、聞く姿を少し意識できたところで、ホームグループのキャッチコピーを他グループにプレゼンしました!1人1人がホームグループの代表として他者にわかるように伝えます。

ここからは「省察とは何か」についての講義内容をご紹介します。
本授業でいう省察活動について「メタ認知」「経験学習モデル」「意識と無意識」の3観点に絞りもう少し詳しく説明します。まずは「メタ認知」について。前回ブログでも紹介しましたが、本授業でいう「メタ認知」とは、次の4段階のモニタリングで構成されています。
1.芸術表現体験活動最中の自己モニタリング
2.芸術表現体験活動後の自己モニタリング
3.時間が少し経った時に印象に残ったことに基づいた省察で活動をキーワード化(=省察活動)
4.キーワードをまとめて概念化=抽象的な意味づけをする。
この3段階のモニタリングができるようになると、本授業の意味がわかるようになったり、自分のことがわかったりするということです。

この省察活動の考え方は社会の中で「経験学習モデル」として広く知られています。Kolb D.A.(1984)の経験学習モデルは人が経験を通して学習するプロセスには具体的経験→内省的観察→抽象的概念化→能動的実験の要素があり、このサイクルを繰り返し回すことで人が成長していくというモデルです。このサイクルは今、教育分野でも重要であると言われています。

Korthagen,Fred A.J.(1985)は教える側も学び手として経験学習モデルを行う必要があるとして、「リアリスティックアプローチ(Realistic approach)」を提唱しています。

また、Donald A. Schön&Chris Argyris(1978)は組織学習においてシングルループとダブルループの考え方を提唱しています。簡単に言うと、シングルループはすでに備えている考え方や行動の枠組みにしたがって問題解決を図っていくこと。 ダブルループは既存の枠組みを捨てて、新しい考え方や行動の枠組みを取り込むこと。これらシングルループとダブルループを組み合わせ、外部から新しい知識や枠組みをダブルループ学習し、それをまたシングルループ学習によって反復・強化していくことの繰り返していくことが組織学習では重要であると言われています。

最後に「意識と無意識」の話です。本授業を脳科学の視点で捉えると、芸術表現体験活動は“身体と即興“の小脳を使った学びです。一方で省察活動は”思考と熟考“の大脳を使った学びです。Daniel Kahnemanが提唱しているこの脳の2つの構造は「ファスト&スロー」として本も出版されています。つまり、感覚でやることは小脳(=無意識)、考えることは大脳(=意識)を使っているんです!この2つを両方使って学べる場として本授業があります。

授業前半戦はこれで終了。ここからは後半戦です。自分たちの能力仮説を考え、今度は自分のキャッチコピーを作ってみます!

まずは個人のキャッチコピーを作ります!そのためにまずはグループの中でこれまでの活動を振り返り、お互いの良かったところ言い合います。お互いを褒め合うことは少し恥ずかしいような気もしますが、認め合ったり褒め合ったりすることで自分の良いところを意識するきっかけになります。間違えたところを直して100点を目指してきたこれまでの学びだけでなく、自分の良いところを把握して伸ばしたり磨いたりしていく学びをここで経験してほしいと思います!
また、自分でも自分自身のことを考えて能力仮説を立ててみます。参考として女優の深津絵里さんのインタビュー記事より、彼女の能力仮説の立て方を真似たいと思います。(以下、朝日新聞GLOBE「突破する力」より引用)
深津絵里さんは、自分のどんな「力」に自信があるのか。編集部(GLOBE)があらかじめ準備した10種類の「力」に順位をつけてほしいとお願いしたところ、すべてを独自の「力」に入れ替えたランキングをいただいた。
「ちょっと考えてみます」と、リストをいったん持ち帰った。後日、いただいたランキングは意表を突く力ばかり。身体にまつわる力も目立つ。このうち握力は、「春琴」の舞台で大きな人形を操り続けることで強さを証明した。人形は物語が進むうちに成長して大きくなり、最後は自分の背丈ほどにもなる。「公演が終わったときには手がしびれています」
「あきらめ力」「デストロイヤー力」「鼻が利く力」の意味については、「ご想像にお任せします」。自分について多くを語ろうとせず、さらりと煙にまくところもある。そんな自分を意識してか、7位に「はぐらかし力」を挙げた。
1 視力
2 握力
3 我慢力
4 胃力
5 あきらめ力
6 デストロイヤー力
7 はぐらかし力
8 鼻が効く力
9 消去力
10 抵抗力
深津さんは予め用意された10個の能力を並び替えるのではなく、自分の持つ能力に名前をつけてランキングにしていますね。この能力仮説の立て方とその中身を参考に、受講生のみなさんにも能力仮説を考えてもらいました。

そして自分の考えた能力仮説を参考に自分のキャッチコピーを作ります。「相談力」を発揮して、グループのメンバーと相談しながら作ってもOK!

続いて、前回提出してもらった学生のリフレクションシートの全体共有をしました。苅宿教授のコメントとともに振り返ります。
「演劇は自分に向いていない」
向いてないと思ったということを書いてくれたことは授業をデザインしている側にとっては大きなギフトです。大学はさまざまな意見を自由に出せるところなので、これからもそのときに感じたことを素直に書いてほしいと思います。

「個性の爆発」
本授業はトライ&エラーができるので、自由に意見を言う、周りを読んで遠慮しないなど自分の能力仮説を試し、しっくりくるものが失敗や周りの目を恐れずに見つかれば磨きをかけていってほしいと思います!

「自分の殻を破って新しい自分が見つかった」
演劇は自分以外のものになれるので人を変えられる可能性を持っていると思い、受講生のみなさんに体験してもらっています。

「人に伝えることはとにかくむずかしい」
難しいことが”わかる”ことってとても大切だと思います!

「チームワークがいいほど個性が目立つ」
これはキャッチコピー的な言い方ですよね。役割の中にその人の個性が出ることを見つけたんですね。おもしろい発見です!

「認め合うことの大切さ」
頭ではわかっていること理屈ではわかっていることを経験すること、確認することが大切だと思います!

続いて、『ポートフォリオを作ろう!』(青山学院大学大学院車騎情報学部車買う情報学研究科ヒューマンイノベーションコース+フィルムアート社, 2015)という本と繋がりのある「リフレクションシート」をいくつか見つけたのでこちらも苅宿教授のコメントとともに紹介します。(『本のタイトルより』、「受講生のリフレクションシートより」)

『経験を書こう』
「人の考え方って十人十色って本当だった!」
「表現することの意味を身をもって知った」
体験と経験は異なります。「体験」は、feelingに近い意味で自分が変化することはありませんが、「経験」は時間を経て、自分が「変化」します。
本授業では省察が「体験」を「経験」化しています。「体験」はやったこと、「経験」はそれをふりかえって時間をかけて自分にとってどういう意味かに気づいて行くことです。

『道具を作ろう』
「視点を変えるだけでこんなにも違う!」
道具には物体だけでなく、思考や思想、視点といった概念も含まれます。概念を介して場を見ることで、素朴に見ているものとはちょっと違った視点から対象を観察することができます。
自分の考えを出力するときにあるといい道具は何でしょうか。本授業では自分にとっての最適な道具を探すためにポートフォリオを作っています。つまり、ポートフォリオを作りながら自分のアウトプットに最適な道具を探している学びなのです。

『自分らしさを自分で決めない』
「自分を知らないのは自分かもしれない」
人間の個性や特徴は、本当は主体当人が判断するものではないのです。
自分のことは他者が引き出してくれるもの。したがって、本授業ではグループワークを大切にしています。

リフレクションを通して新しい視点や尺度が生まれていましたね。残りの時間はポートフォリオ作りになります。これまでの授業の様子を撮影したシール等使ってスケッチブックに自由に表現していきます。

これで今日の授業は終了。来週は再び、体験回です。コンタクト・インプロビゼーションのアーティスト勝部知子氏、鹿島聖子氏にお越しいただいきます!

社会情報学部附置社会情報学研究センター
研究スタッフ 岡本夏海

vol.6【鹿島聖子氏/勝部知子氏】ワークショップデザイン/メディアコミュニケーション6月1日

本授業ではアート系ワークショップの体験(芸術表現体験活動)とそれを振り返る活動(省察活動)、自らの学びの履歴を可視化するポートフォリオ作りなどを180分で行っていきます。これらを円環的に繰り返していくことを通して、最終的には多面的な自己に気づいていくことを授業の到達目標としています。

第6回目の授業が行われました!
今日はアート系ワークショップの(芸術表現体験活動)体験回です!
本日のゲストはコンタクトインプロビゼーションダンスのアーティスト勝部ちこさんと鹿島聖子さんです。お2人はコンタクトインプロビゼーションの研究、普及、国際フェスティバル制作、教授活動、国際交流などを行なっている、日本では希少な国際派ダンスグループC.I.co. を結成されています。

勝部さん鹿島さんの声かけとともにワークの内容と様子をお届けします!
まずは身体を大の字にして寝転がり、目を閉じます。そして、次の2つのことを考えます。「自分の身体はどこにありますか?自分の意識はどこにありますか?」もし意識が過去や未来にある人は今に意識を向けます。身体と意識が今に到着したら、首、手首、足首、肩、膝、背をほぐします。
次に座った状態から、再び寝ます。ただし、寝るタイミングが他の人と被らないようにします。今度は逆に他の人と被らないように起き上がります。
今日のコンタクトインプロビゼーションダンスの活動は決まった正しい動きがあるわけではないのでこのワークのように、自分で即興的にタイミングを決めてやっていきます。

次に、手を合わせてその手をこすり合わせます。手から良い”気”を出します。その”気”を全身に塗るように摩ったり、叩いたりしていきます。自分にとって人気のある箇所とそうでない箇所があると思いますので、隣の人からも摩ったり、叩いたりしてもらいます。

ここで、隣同士が被らないように並び直します。ただし、「握手」「ハイタッチ」「ハグ」のいずれかをなるべく全員としてから並び直します!最初は男子のかたまり、女子のかたまりにはっきり分かれていましたが、”なるべく全員と”というルールだったので徐々にかたまりは体育館の中心に1つのみになり、コミュニケーションを取り合う様子が見られました!

今度は丁寧に呼吸をしながら身体をストレッチ!

次は2人組になって1人がリーダー、もう1人がフォロワーとなり、リーダーが出す手にフォロアーが”遠回りで”たどり着くようにします。

▼徐々に、他の組と空間を共有していきます。ただし、浮気はしない!あくまでも先ほどの2人組みのペアは変わりません。

次に、2人で手を繋いでバランスをとります。相手を信頼して、うまくバランスがとれると自分1人ではできない体勢をすることができます。重心のベクトルをお互い外側に向けるイメージ。

今度は重心のベクトルを中心に向けてみます。例えるとしたら・・・押し相撲のようなイメージですね。重心を下げること、股関節と膝と足首の3点セットを柔らかく動かすことがポイント!

これまでやった、外側にベクトルが向いていた手の取り合いと中心にベクトルが向いていた押し合いを4人で自由にチェンジしてやってみます!

最後は勝部氏鹿島氏の即興インプロダンスを見せていただきました!!2度と同じダンスを見ることができないのがコンタクト・インプロビゼーションダンスの面白さですね。

〜休憩〜
ここからは省察の時間です。前回のリフレクションシートに「授業に慣れてきた」という感想がありました。たしかに授業中の様子を見ていると、良い意味で緊張感がなくなってきたように感じます。
今回はこれまでの省察時間の振り返りと、先週までのリフレクションシートを共有!残りの時間はポートフォリオ作りをしました。

最後に、勝部さん鹿島さんより今日のワークの意図についてお話を伺いました。
まず、アライビングといって、大の字になって寝転んだ状態で「今ここにいますか?」と問いかけられることから活動がスタートしました。「今ここにいる」ことで怪我を防げるという効果もあります。受講生だけでなく、勝部さん鹿島さん自身にとっても重要なスタートだそうです。
次に、実際に身体をほぐすウォームアップをしました。歩きまわりながら、改めて今日のみんな(=受講生)を見ます。どんな顔か、どんな服を着ているのかなど。そして、「握手」「ハイタッチ」「ハグ」の3つの中から相手と自分の中でやることを決めて挨拶をし合ってもらいました。受講生はこのワークをきっかけに、自分たちで”決める”ことを委ねられている活動であると身体的に認識していったはずです。
次に、自分の身体を触ってもらいました。自分の身体を自分で認識すること、ただし頭で考えるのではなく触ることによって身体で感じることが大切です。しかし、人は自分自身に遠慮していることがあります。ここで自分を受け入れることができれば、自然と他の人も見えてくるのではないでしょうか。
次に、2人組でリーダーとフォロワーのワークをしました。周辺ペアと交わっていくと、その空間に人が増えていきます。こうして人が増えていくと楽しさが倍増していくことを身体的に感じることできたと思います!
ワーク中おもしろいなと思ったのは男子チームが女子チームのところに行くか行かないか迷っていたことですね。同じ人と人なので、性別は気にせずに入りたいと思えば迷わず入っていいのです!どこか日常で同じような状況になったとき、今日のことを思い出して考えてもいいかもしれません!

社会情報学部附置社会情報学研究センター
研究スタッフ 岡本夏海

vol.7【藤田善宏氏】ワークショップデザイン/メディアコミュニケーション6月8日

本授業ではアート系ワークショップの体験(芸術表現体験活動)とそれを振り返る活動(省察活動)、自らの学びの履歴を可視化するポートフォリオ作りなどを180分で行っていきます。これらを円環的に繰り返していくことを通して、最終的には多面的な自己に気づいていくことを授業の到達目標としています。

第7回目の授業が行われました!今日もアート系ワークショップの(芸術表現体験活動)体験回です。
本日のゲストはダンサーの藤田善宏さん。ダンスカンパニーであるコンドルズ(http://www.condors.jp/index.html)の立ち上げから所属し、舞台やダンスの振付家やダンサーとしてご活躍されています。また、教育現場などで子ども向けにダンスワークショップもされています。

それでは、盛り上がったワークショップの様子を紹介していきます。
まずは1人で前屈。次は2人1組になって前屈。この時、一方の人の肩にもう一方の人が手を添えた状態で前屈をすると、さっきよりも深く前屈が出来るようになります!人は前屈すると無意識に崖から落ちるような気分になり、その恐怖が脳に伝わっているそうです。そこで、他者の肩に片手を添えて前屈するとリラックスして前屈が出来るとのこと!

次に、擬音語「ふにゃ〜」を声に出しながら前屈をしてみます。こちらも、オノマトペ効果といって口に出すことによって脳と身体が騙されるということがあるそうです。例えば、ボクシングの人たちが「シュッシュッ」と言うことにも意味があるそうですよ。

次は2人1組になり、一方の人が差し出す腕をもう一方の人が押しさげます。さらに、腕を差し出す人は過去の嬉しかったこと楽しかったことを思い出したり、反対に悲しかったことや辛かったことを思い出したりしてみると・・・?実は先ほどの脳の効果と同じで、ネガティブの方が力が入りにくくなるそうです。

ここからは柔軟体操です!このあとたくさん動くので、十分に身体をほぐしておきます。

今度は足の裏をくっつけた状態で、膝、肩、肘、をうまく使って1回転!足を広げた状態や、足を閉じたり開いたり交互にして、同じように回ってみたりもしました。

次は新しい4人グループになって1人を囲むようにして他の3人が中心の1人の周りを息を合わせて回ります!

今度は2人1組で高くジャンプをします!ジャンプする人の腰をもう一方の人が持ち、「せーの!」の掛け声でジャンプ&腰を持ち上げると・・・1人では不可能な高さのジャンプが可能になります!

次はジャンプする人がもう一方の人の両腕を使って、高くジャンプ!

次はここまでのジャンプ合わせ技。

今度は3人1組になり、両手を広げている人の両脇に1人ずつたち、「せーの!」で持ち上げます。ジャンプと両脇の人の力のタイミングが合うと一気に持ち上がります!

次は本を使ったワークです。ここからは演劇的な要素も入ってきます!まず2人組で1冊本を持ちます。このワークでは1人が本を読んでいるのをもう1人が覗き見します。読んでいる側は、嫌だな〜という雰囲気を出しながら相手に覗き見られないように方向転換をして本を読み続けます。

次も基本的には同じことをするのですが覗く側が本を奪います。そしてまた覗く側になった人が本を奪う、この繰り返しです。嫌そうに逃げて、と言われてもだんだん楽しくなってきてしまうんですよね。受講生のみなさんとても楽しそうでした!

▼▼次は本の奪い方を少し変化させます。本を読んでいる人の肘を押し上げて、本を奪います。実は、肘を押すと簡単に頭の上から本を奪うことができます。人の動きって小さなポイントを掴むと、思い通り変化させることができるんです!

いろいろな本の奪いかたを試してみます!この時、これまでぺアではなかった人の本を奪ってもOK!
▼例えば、こんな奪い方もありましたよ!

次はペアを組み直して、一方がマネキン、もう一方がマネキンを自由に動かす人になります。マネキンを好きなように動かしたら、本を奪います。そうすると役割が交代になるという繰り返し。マネキンの脇を持ち上げて座らせたり、立たせたり、足を引っ張って移動させたり、寝転がせたり、手を引っ張って起き上がらせたり、藤田さんが教えてくださったコツを使ってマネキンを動かします!

ここからは省察の時間です。
まずは先週のワークを動画で振り返ります。このところ、授業に「慣れてきた」というリフレクションシートをよく見かけるようになりました。「慣れてきた」という感覚は非常に重要で、慣れてないと慣れたの間に存在します。たとえば、「できない」と「できる」の間に「できてきた」、「わからない」と「わかる」の間に「わかってきた」がありますが、この「〜〜きた」という変化の最中を本授業では大切にしています。

さて、この「できる」「慣れる」という現象には先があります。「できる」「慣れる」を越えると、「できすぎる」や「慣れすぎる」になってしまいます。慣れすぎたものはその人にとって当たり前になって固定化してしまいます。

この当たり前という凝りを学びほぐしていく必要があるため、大人になってから大学に通ったり講座に参加したりするようになる人や学びの場を運営する団体が増えているんですね。

今回は「慣れてきた」を「慣れた」にすることと、「慣れた」を「固定化」しないことの2つを目的として藤田さんのワークを体験&省察してもらいます。
まずは藤田さんのワークショップ体験中の様子を写真と映像で振り返ります。

次に、藤田さんより今日のワークショップについて、1人よりも2人、2人よりも3人というように誰かがいるとできることがあるということを知ってもらえるようなワークにしましたとのことでした。

前回の勝部さん鹿島さんのワークショップ、藤田さんのワークショップ、2つの体験で気づいたことや知ったことをグループでKJ法でまとめます。
▼まずは1人で考えます。

【おまけ〜前回・前々回のリフレクションシート紹介〜】
▼体験したことを言葉で説明するのは難しいことなので当たり前!でも、だからといって言語化しなくていいやというのではなく、言語化を目指して省察をすることは大切なことだと思います。

▼▼今は映像や写真を通して自分を俯瞰して見ていますが、この授業を終える7月頃には何も道具を使わずに自分自身を俯瞰して見れる自分を作れるようになっているといいですよね!

▼上記の道具以外にも、自分を俯瞰して見る方法はあります。その1つが、他者です。他者を通して自分を見ることは日常に埋め込まれているので無意識になりがちですが、自分と他者の相互作用を意識するだけで自分の見方が広がります。

▼メタ認知がすでにできている人も中にはたくさんいると思います。しかし、それを意識しているかしていないかの差はとても大きいので、常に意識する自分を作るといいと思います!

▼非日常体験による気づきですね。本授業では固定化されてしまっている自分を一度分解したり、違う方向から見てみるきっかけをくれるのが非日常体験です。

▼素を出せたということは素を出せるような環境ができているということです。毎回授業を見ていて思いますが、「これを言ったら恥ずかしい」とか「これはなんか違うかもしれない」とか「とりあえずみんなと共有しよう!」というような遠慮をしなくても良い学習環境が徐々に作り上げられてきていると感じます。

社会情報学部附置社会情報学研究センター
研究スタッフ 岡本夏海

vol.8【省察回②】ワークショップデザイン/メディアコミュニケーション6月15日

本授業ではアート系ワークショップの体験(芸術表現体験活動)とそれを振り返る活動(省察活動)、自らの学びの履歴を可視化するポートフォリオ作りなどを180分で行っていきます。これらを円環的に繰り返していくことを通して、最終的には多面的な自己に気づいていくことを授業の到達目標としています。

第8回目の授業が行われました!今日は省察回です。前回、前々回のワークショップを振り返っていきます。まずは、前回授業最後に行った「2つのダンスワークショップで感じたことや気づいたこと」をテーマにしたKJ法の続きです。前回のテーマに加えて新たに「このグループだからできたこと」についても考えながらKJ法を行いました。

前回までに、学習コミュニティがかなりできあがってきていることを受講生自身もスタッフも感じるようになってきました。そこで、改めて自分の名前+好きな食べ物、いつも聞いている曲、感動した映画映画、生きる上で参考になった本を共有し合います。

今日はまず、ポートフォリオ制作を行います。これまでは体験したことを時系で並べたり、印象に残ったことをポートフォリオに記録していましたが、今回はこれまでと違う「視点」で作ります。その「視点」とは、自分たちがやったことにはどんな意味があるのか?と活動を抽象化して意味付けるというものです。このとき、これまでグループでまとめてきたKJ法などのデータも使っていきます。体験の意味を考え、概念化やキャッチコピー化に繋げるポイントはよかったと感じたことを解明することつまり、よかったと思えたことがどうしてできたのかを考えることです。今回は新たな「視点」を意識してポートフォリオ制作に入ります!

〜休憩〜
後半戦は能力仮説について考えます。
5月25日に考えた自分の能力仮説を見ながら、もう一度考えてみます。5月25日は自分の中にある能力をテーマにグループメンバーと話しながら考えていきました。今日はその能力がどのような状況や環境で生まれやすいのかを考えます。例えば、「プレゼンテーション能力」は聞く人がいるからこそ、その人へ訴えるかけることができる力として生まれる能力です。能力は自分一人が自分の中に持っているものではなく、相手がいてはじめて能力となります。

では、能力仮説について考えながらプレゼンをしてみます!その時に活躍するのが語れるサンカクという道具。物を使って考え、伝えるという苅宿教授おすすめの学習スタイルです。

▼彼が「自分の好きな物」をテーマに見本を見せてくれました!
「好きな物は映画、音楽、洋服です。映画は去年や一昨年は1年間で100本くらい見ました。音楽は登下校中ずっと聴いています。町の音も好きです。イヤホンがないと大学に行きません!洋服はその人自身を表すと思っていて、僕にとって洋服は「着る」ではなく「纏う」感覚です。」

ここで、次の2種類の言い方から好きな方を選んで1分動画を撮影しました。
帰納的な言い方 「1、2、3それを合わせると私ができます!」
演繹的な言い方 「私は次の3つでできています!1、2、3」

来週はメディア表現の体験活動です。最後に、来週に向けての自分の能力仮説を来週活動を共にするグループメンバー間で調整しました。

社会情報学部附置社会情報学研究センター
研究スタッフ 岡本夏海

vol.9【岡本夏海】ワークショップデザイン/メディアコミュニケーション6月22日

本授業ではアート系ワークショップの体験(芸術表現体験活動)とそれを振り返る活動(省察活動)、自らの学びの履歴を可視化するポートフォリオ作りなどを180分で行っていきます。これらを円環的に繰り返していくことを通して、最終的には多面的な自己に気づいていくことを授業の到達目標としています。

第9回目の授業が行われました!今日はメディア表現ワークショップの(芸術表現体験活動)体験回です。本日はいつもスタッフとして授業に参加している岡本夏海がワークショップを進行していきます!

それではさっそく、ワークショップの様子を紹介していきます。
まずはじめに、今日のグループのルール1つと個人のルール1つを決めます。個人のルールは他の人に見えないように書いてもらい、最後にグループ内で共有したいと思います。
▼受講生が決めたグループのルールと個人のルール

まずはアイスブレイクとして、ヨシタケシンスケさんの「つまんない つまんない つまんない」という絵本を読みます!小学校の読み聞かせ風に各グループで読んでもらいました。つまんないことをなぜだろうと考えてみると意外と面白いかもしれないと、大人をハッとさせてくれる絵本です。

今日はこの絵本から感じたことをそれぞれがマインドとして持ち、逆転時間アプリというコンテンツを使い、2つのコンセプトのワークショップを体験してもらいます!
まずは、コンセプト1つめの「アイデア出し」!逆転時間アプリを使って面白い作品を作ってみてください!というお題に挑戦してもらいます。

完成した作品を2グループ1組で発表し合います。

次はコンセプト2つめの「ブラッシュアップ」!逆転時間アプリを使って普通の動きに見える作品を作ってもらいます。作品の題材は次の10種類の日本昔ばなしのあるシーンです。シーンはグループごとに4つ選んでもらいます。
「桃太郎」「浦島太郎」「一寸法師」「金太郎」「かぐや姫」「さるかに合戦」「おむすびころりん」「花咲か爺さん」「一休さん」「わらしべ長者」

完成した作品を先ほどとは違う2グループ1組で発表し合います。
まずは説明なしで作品を見せて、相手グループに何の昔話を題材にしたのかを当ててもらいます。さらに、相手のグループに質問をしてもらいます。「この人は何の役なの?」「今手を動かしたのは何のためなの?」「ここはこう動かすと自然に見えると思う!」など、作品のブラッシュアップにつながる質問を受け付けます!

最後に、個人で決めていたルールをグループ内でシェアして、グループのルールも踏まえて今回の活動を振り返ってもらいました!

この授業では学習コミュニティが出来上がっていたため、思ったことを共有してやってみるというトライがどの班も繰り返し何度もできていたように感じました。コミュニティが出来上がっていないとトライの数が少なく、勢いが出るまでに時間がかかってしまいます。
今回の活動を通して協働的な活動をするときにコミュニティ形成の質が大きなポイントになることを、学生から気づかせてもらいました。また、受講生の面白がるセンスが高いこともとても印象的でした。

【おまけ〜前回・前々回のリフレクションシート紹介〜】
▼絵本は子どもだけでなく、大人にも気づきを与えてくれる不思議なメディアですよね!

▼新しいものを生み出すのも、あるものをうまく活用するのも、おもしろがれる人が集まるコミュニティが大切な基盤であると、体験を通して気づけたことは大きな学びだと思います!

▼おもしろがる力をこの授業以外でも活用してみると、大学生活に少しの変化が生まれるかもしれませんね。

▼得意不得意、好き嫌いの前提条件を考えてくれたのはとても嬉しいことです!前提条件の話はこの授業ではしていませんが、受講生のみなさんは1年生の必修授業で苅宿教授の話を聞き、グループワークを3回体験しています。そのときのことを踏まえて考えてくれたのかな。

社会情報学部附置社会情報学研究センター
研究スタッフ 岡本夏海