越境するアーティスト 越境するアーティスト

子どもには予想できない捉え方や発想、表現があるため「そっちかー!!」というようなおもしろいことが起こるんです。

藤田 善宏Yoshihiro Fujita

福井県出身。国立群馬大学教育学部美術教育学科。群馬大学非常勤講師。プロデュースユニットCAT-A-TAC(キャットアタック)主宰。ダンスカンパニー「コンドルズ」には、96 年の立ち上げから参加。ダンスに対する捉え方や発想の方法が自由な、コンテンポラリーダンスを主軸にさまざまな分野で活躍している。
プロデュースユニットCAT-A-TAC の関連作品、ニヴァンテ「ライトな兄弟」では、平成29 年度(第72 回)文化庁芸術祭の舞踊部門・新人賞を受賞。

古くから、学校は先進的な知的生産の場でした。なぜなら、学校でしかできないことが多かったからです。例えば、ピアノの演奏や映像の鑑賞、パソコンの操作、外国語の習得などです。しかし現代では、学校は情報化や国際化に関わる知識や技能、研究的視点、地縁的な関係性などを学校外から学ぶ必要が出てきました。なぜなら、学校でしかできなかったことが、学校外でできる時代になったからです。そこで、今までのパッケージ化した教えを越境し、新しく柔軟な考え方を取り入れて行く必要があります。

学校が凝り固まったこれまでのやり方を見直さなければいけない局面にある中で、アーティストが学校教育に参入し、ワークショップ等の表現活動を行う事例が多く見られます。彼らはどのような思いを持ち、学校での活動を行っているのかをインタビューしました。

藤田氏には、ALE プログラムの芸術表現活動において、アーティストとしてこれまで数多くの活動を実施していただきました。我々との活動以外にも、子どもたちを対象として学校内外でワークショップ等の活動をされていますが、こうした活動を続けている理由は何か、お話を伺いました。

身体を使うことは流派を学ぶことではなく、
おもしろさを共有すること

普段、ダンスの境界を意識されていますか?

認識はしていますが、意識はしていませんね。ダンスとはこうあるべきみたいなものを越えていきたいと思っています。例えば何か活動をするときには、いくつかのイメージを持っていきますが、脱線したらその道でやるとかもありますよ。ダンスは好きだけど、ステップを踏めないフラストレーションを持つ人もいます。そういう人たちには特に、ダンスとは身体表現だということを伝えたいです。ダンスをこういう感じで楽しめたらいいなというイメージはあります。難しくない、楽しい、キャッチー、変な振りをやりたいですね。

表現活動にダンス以外のものを取り入れるとした時、あるいはダンスを他のものに寄せていくとした時、対象は何ですか?

まずはモノになってみようとか、モノを表現することです。なりきり遊びやごっこ遊びてきなのは好きですね、パントマイムとかも。やみくもに踊っているというよりは、そこに何かしら流れや筋、ストリーがあるように、抽象的なダンスを具象に寄せるのがおもしろいです。

ダンサーと学校を繋いでいるものとは何だと思いますか?

コーディネーターや先生など、間に入っていくださる方がいないと繋がることができないので、そこがまず前提としてあります。依頼をいただくときは、「こうしてほしい」という細かい制限はなく、我々の活動を知った上で「お任せします!」と言っていただけることが多いですね。ダンスのワークショップはいろいろあって、我々がやっているのは表現系です。ヒップホップやジャズはいかにかっこよく踊れるかが落とし所で、達成感になります。一方で、我々はそうではないところでやっているので、どういう達成感を経験させてあげられるかの話し合いを、コーディネーターの方や先生方と密にすることが大切ですね。

表現活動を通して、子どもから得られるものはありますか?

自分のワークショップを練り直す発想を与えられるってことはありますね。子どもには、予想できない捉え方や発想、表現があるため、「そっちかー!!」というようなおもしろいことが起こります。そういう時、私は嬉しさ半分、悔しさ半分という気持ちです。こうなったらいいなというビジョンはありますが、最終的にブレイクスルーしても構わないと思っています。急に、「椅子使っていいですか?」とか言われたりしますからね(笑)そういったおもしろさを共有することで、新たな表現が生まれていると思います。

学校で表現活動を行う際に、評価はいると思いますか?

一生懸命やったとか、評価する対象はいっぱいあるとは思います。ただし、達成度合いとか楽しめたとかが自分の中ではあっても、人と比べる必要はないですね。まあでも、評価されるから一生懸命やる子も出て来るだろうし、集中してくれるっていうのはあります。あるいは、担任の先生がいないときに活動をどう進められるかっていうのも、評価できるかもしれませんよね。そういう環境でどう進められるかは自分もみてみたいっていうのはあります。

公演と学校での活動どちらも積極的に取り組まれていますが、コンセプトは異なりますか?

一生懸命やったとか、評価する対象はいっぱいあるとは思います。ただし、達成度合いとか楽しめたとかが自分の中ではあっても、人と比べる必要はないですね。まあでも、評価されるから一生懸命やる子も出て来るだろうし、集中してくれるっていうのはあります。あるいは、担任の先生がいないときに活動をどう進められるかっていうのも、評価できるかもしれませんよね。そういう環境でどう進められるかは自分もみてみたいっていうのはあります。

学校内外問わず、子どもと活動するときは何がキーワードですか?

ちょっとした「非日常感」ですかね。授業で教わらない、経験しないであろうことをさせてあげたいと思っています。劇をやらせたいわけじゃないし、ガチガチのダンスをやらせたいわけでもない。1 人ではできない動きが友達と一緒にやるとできたとか、おもしろい発想ができたとか、何でもいいから盛り上がって楽しかった、おもしろかったという気持ちを経験として持ち帰ってもらいたいです。表現することに対してタブーがないように気をつけていますが、作品に責任を持ってもらうために、人前で発表をさせることは大切にしています。

藤田さんにとって見る人が楽しむことが一番ですか?

思いつきでこういうのをやりたいというのはあるけど、見せ物なので、お金を払ってきていただいている以上は見に来て良かったと思ってもらえるように考えています。ダンスを生業にしている以上は、おもしろいものを提示できたらと思っています。身体表現をやっている人たちのモチベーションは、自分の表現を見て楽しんでもらえているという実感だと思いますよ。

藤田氏による表現活動の様子